16.平成12年度東京都社会福祉基礎調査


「高齢者の生活実態」の結果


@ 世帯の状況

☆ 「ひとりぐらし高齢者」17.6%、「高齢者夫婦のみ」29.8%など「高齢者のみの世帯」が49.4%、「高齢者のみでない世帯」が50.6%と、「高齢者のみの世帯」が『昭和60年度調査』から連続して増加しており、「高齢者のみでない世帯」とほぼ同じ割合になっている。
 また、「高齢者と配偶者のある子と孫」など、いわゆる三世代同居世帯の割合は14.2%と、『昭和60年度調査』から連続して減少している。
○ 子どもと同居をしている高齢者の割合は、『昭和60年度調査』から連続して減少しており、『本調査』においては「同居」43.4%、「別居」44.7%と、初めて「別居」が「同居」を上回った。また、子どもと別居している高齢者のうち、子どもの「隣」に住んでいる高齢者は18.4%と、『平成7年度調査』と比べると、5.6ポイント減少している。
 子どもと別居している高齢者の今後の子どもとの同居意向は、6割に近い高齢者が「今のままで暮らしたい」と答えている。特に、隣に住んでいる高齢者の場合、その割合は7割を超える。
○ 子どもや孫との付き合い方については、半数に近い高齢者が、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」と答えており、年齢階級が低くなるにつれて、その割合は高くなっている。
○ 家族の生活の中で「役割はある」高齢者は73.7%、「特に役割はない」高齢者は12.7%、「家族はいない」高齢者は12.2%となっている。性別でみると、男性の高齢者では83.3%が、女性の高齢者では66.1%が「役割はある」と答えている。
○ 資産を「家族(配偶者を含む)や親族に継承したい」と考えている高齢者は60.1%である。
 一方、「他人より自分の生活に役立てたい」と考えている高齢者は16.4%である。
 

A 健康状態

☆ 健康状態が「大変良い」「普通」と答えている高齢者は、合わせて76.3%と『昭和60年度調査』から引き続き高い割合となっている。特に、70歳未満では、男女とも8割を超える高齢者が「大変良い」「普通」と答えている。
○ 何らかの傷病にかかっている高齢者は、76.8%である。
 傷病の内容(複数回答)は、約1/3の高齢者が「高血圧」を挙げており、次いで「眼疾患」  「心臓病」の割合が高くなっている。また、男性では「糖尿病」、女性では「リューマチ・関節  炎」の割合も高くなっている。
 これらの傷病にかかっている高齢者のうち、「通院」又は「往診」してもらっている高齢者は9割を超える。その過去1か月間の通院総日数は、「2日以下」が66.1%である。
○ かかりつけ医が「いる」高齢者は、約81%と8割を超え、特にねたきり高齢者、ねたきりに近い高齢者においては、9割を超えている。
 また、かかりつけ医の所在地については、「自宅と同一区市町村内」である割合が約79%となっている。
☆ 健康のために気をつけていること(複数回答)について尋ねたところ、「食生活に気をつける」71.1%、「睡眠を十分とる」58.1%、「定期的に健康診断を受ける」54.9%、「規則正しい生活を送る」53.0%等、すべての項目にわたって40%以上の高い数値を示しており、健康に対する高い関心が伺われる。


B 世話の状況

☆ 日常生活をする上で、世話を「常に受けている」又は「ときどき受けている」高齢者は11.9%で、約86%が「ほとんど受けていない」と答えている。特に、75歳未満においては、9割以上が「ほとんど受けていない」と答えている。
☆ 世話の内容(複数回答)では、「日常の買い物」「掃除や洗濯」「食事の支度や後片づけ」が高い割合となっているが、75歳を超える高齢者においては、「外出の付き添い」「医療機関や行政機関等への連絡」「年金受取りの代理や通帳の管理等」もそれぞれ60%を超え、高い割合となっている。
☆ 主に世話をしている人は、「世帯員」と「世帯員以外の親族」で、その割合は、合わせると依然8割を超えているが、「ホームヘルパー」の割合が12.6%と『平成7年度調査』に比べ、8.3ポイント増加している。
 世話をしている親族の中では、「配偶者」が35.0%と最も高く、次いで「娘」が27.6%となっている。また、「配偶者(妻)」「娘」「息子の配偶者」を合わせた女性の割合は70.1%で、 『平成7年度調査』より4.8ポイント減少している。一方、「配偶者(夫)」「息子」「娘の配偶者」を合わせた男性の割合は24.5%と、4.7ポイントの増加をしている。
○ 主に世話をしている親族の年齢は、「50〜59歳」の割合が31.7%と最も高く、その平均年齢は59.49歳である。また、配偶者(夫)である場合の平均年齢は73.95歳、配偶者(妻)では71.80歳となっており、配偶者(夫)においては、4人に1人が「80歳以上」となっている。                          
 なお、主に世話をしている親族の60歳以上の割合は『本調査』では47.4%と、『平成7年度調査』54.1%と比べ、6.7ポイント低くなっている。
○ 主に世話をしている親族の健康状態は、8割を超える人が「大変良い」「普通」と答えているが、配偶者(夫)では約3割が、配偶者(妻)では約4割が「弱い」と答えている。
 

C 住宅の状況

☆ 高齢者全体の住居の状況は、「持家」76.9%、「借家・賃貸住宅」21.3%と「持家」の割合が高く、「高齢者向け住宅」は、0.4%である。
 また、ひとりぐらしの高齢者においては、「持家」53.6%、「借家・賃貸住宅」42.2%となっている。
○ 現在の住宅で「困っていることがある」と答えている高齢者は、26.6%である。特に民間アパート、公社・公団(賃貸)に住んでいる高齢者においては、「困っていることがある」割合が高くなっている。
 困っている内容(2つ以内の複数回答)としては、「構造等が高齢者向きではない」が30.8%と3割を超え、特にねたきり高齢者、ねたきりに近い高齢者においては5割を超えている。
 また、構造等が高齢者向きではないとする内容(複数回答)としては、「段差がある」「車いすが使えない」「階段が急である」「てすりがない」が30%を超える内容となっている。
○ 高齢者向きではない住宅の構造などを改善できない理由(複数回答)としては、「増改築・改善することが構造的に無理である」が41.7%と高く、次いで「費用の都合がつかなかった」29.6%が続いている。また、民間アパートにおいては、「家主の同意が得られなかった」が60.0%と高くなっている。
☆ 12.5%の高齢者が、現在住んでいる住宅からの住み替えを考えている。ひとりぐらしの高齢者においては約20%が、また、現在借家(一戸建て)や民間アパートに居住している高齢者では、半数に近い高齢者が住み替えを考えている。
 希望する住み替え先としては、「高齢者向け住宅」が27.1%と高く、次いで「公営住宅」20.9%となっている。特に、ひとりぐらしの高齢者においては、「高齢者向け住宅」への住み替え希望が44.4%と高くなっている。
* 『本調査』における「高齢者向け住宅」とは、軽費老人ホーム、痴呆性高齢者グループホーム、有料老人ホーム、生活支援ハウス(高齢者生活福祉センター)、シルバーピア・シルバーハウジング、高齢者向け優良賃貸住宅をいう。
 

D 福祉サービス等の利用動向

○ 在宅の高齢者を対象とした福祉サービス等(介護保険を除く)を、今後「利用したい」と考えている高齢者の割合は43.6%である。特に、ひとりぐらしの高齢者においては、48.5%とさらに高くなっている。
 また、利用意向の高いサービス(複数回答)は、「配食サービス」「家事援助サービス」「緊急通報システム等」が20%を超え、高い割合となっている。
○ 世話が必要になったときの対応についての今後の希望は、「自宅で家族に世話を受けて」が31.8%と高く、特に男性の高齢者においては41.1%にのぼる。
 一方、女性の高齢者の希望は「自宅で家族に世話を受けて」24.5%、「施設・病院に入所・入院」23.2%、「自宅で介護サービス等を利用」22.9%がほぼ同じ割合となっている。
 

E 介護保険制度等新たな制度

☆ 介護保険制度について知っていること(複数回答)を尋ねたところ、全体の80%以上の高齢者が「介護を社会全体で支えるための制度である」「40歳以上の人が加入し、保険料を納める」ということを認識している。
☆ 介護保険サービスの決定を行うのにふさわしい人を尋ねたところ、「専門家」が19.1%であるのに対し、「自分」が40.1%、「家族、親族」が37.3%となっている。
☆ 要介護認定の申請の有無については、「申請した人」は8.3%、「申請していない人」は91.2%と、申請をしていない高齢者は9割を超える。申請をしていない理由(複数回答)としては、「健康なので利用する必要がないから」が87.6%と高い。
 日常生活をする上で、世話を「常に受けている」又は「ときどき受けている」高齢者で「申請した人」は55.9%、「申請していない人」は43.6%と、半数近くが申請していない。その理由(複数回答)としては、「家族等の介護で十分だから」が55.1%と最も高く、「手続きの仕方がよくわからないから」「手続きが面倒だから」もそれぞれ1割を超えている。
○ 3割に近い高齢者が、福祉サービス利用援助事業(地域福祉権利擁護事業)及び成年後見制度を「知っている」と答えている。
 また、今後の利用意向については、福祉サービス利用援助事業(地域福祉権利擁護事業)では、23.8%の高齢者が「利用したい」と答え、一方、成年後見制度は、14.6%の高齢者が「利用したい」と答えている。
 

F 就業の状況

☆ 現在の就業の有無を尋ねたところ、「働いている」と答えた高齢者は27.7%で、『平成7年度調査』とほとんど変わらない。性・年齢階級別でみると、男性の65〜69歳で58.2%が、女性の65〜69歳で28.1%が働いている。
 また、現在働いている高齢者に、今後の就業意向について尋ねたところ、9割に近い高齢者が「この状態のまま、継続して働きたい」と答えている。
☆ 就業形態を性別でみると、男性の高齢者では、「自営業等」47.6%、「常用勤労者等」29.3%、「パート等」14.0%、「シルバー人材センターの会員」5.8%となっている。一方、女性の高齢者では、「自営業等」49.1%、「パート等」23.7%、「常用勤労者等」18.9%、「シルバー人材センターの会員」2.9%となっている。
 就業者の働いている理由(複数回答)については、「収入を得たいから」が最も高く62.2%、次いで「健康に良いから」50.0%、「生きがいを得たいから」45.8%と続いている。
○ 現在働いていない高齢者のその理由は、「働く必要がないから、働きたくないから」が45.9%と最も高くなっているが、70歳未満の男性の高齢者においては「自分の希望する仕事や職場がないから」が28.4%と、「働く必要がないから、働きたくないから」33.8%に次いで高い割合となっている。
☆ 現在働いていない高齢者で、今後「働きたいと思っている」高齢者は14.5%である。特に、70歳未満の男性の高齢者の36.4%は、今後就業の意向がある。
 

G 社会参加

☆ 楽しみや生きがい(複数回答)について尋ねたところ、「趣味・娯楽(個人)」が47.7%と最も高く、次いで「友人・仲間とのつきあい」39.2%、「子どもや孫とのつきあい」36.3%となっている。
 性別でみると、男女とも「趣味・娯楽(個人)」が最も高いのは共通しているが、次いで多いのは、男性では「夫婦の団らん」となっており、女性では「友人・仲間とのつきあい」となっている。
○ 約37%の高齢者が「趣味のサークル活動」「スポーツ」「ボランティア活動等」などの活動に参加している。
 ボランティア活動、NPO活動、地域活動を行った高齢者は12.3%で、その頻度は「月に1、2回程度」が36.7%と高くなっている。
 ボランティア活動等の内容(複数回答)は、「地域行事や自治会等の活動」が55.0%と最も高く、次いで「公園などの美化活動やリサイクル活動」「交通安全や防犯・防災に関する活動」などとなっている。女性では、「社会福祉施設等での手伝い」「趣味やレクリェーションの指導」も高い割合になっている。
 また、ボランティア活動等を行う場合の必要な条件(複数回答)として、「活動場所が自宅から離れていないこと」42.6%、「時間や期間にあまり拘束されないこと」39.3%などを挙げている高齢者が多い。
○ 週の半分以上を外出(日常の買い物等を含む)している高齢者は2/3を超え、「ほぼ毎日」外出している高齢者は半数を超えている。
 しかし、男女とも年齢が高くなるにつれて、「ほとんど外出しない」割合が高くなり、女性の85歳以上では35.6%が「ほとんど外出しない」と答えている。

○ 近所づきあいの程度については、37.0%の高齢者が「立ち話をする程度の人はいる」と答えている。また、居住開始が古いほど、「お互いに訪問し合う人がいる」割合が高くなっている。
○ 必要とする情報(複数回答)は、「福祉サービス」30.9%、「健康づくり」30.9%、「医療」30.7%が高い割合になっている。これらの情報の入手方法(複数回答)は、7割を超える高齢者が「テレビ」や「新聞(タウン誌を含む)」となっている。また、男性の高齢者においては、6.7%が「インターネット等」から情報を入手している。
○ 現在、不安や悩みごとが「ある」高齢者のその内容(2つ以内の複数回答)は、「健康に自信がない」57.5%、「家族や親戚のこと」26.0%が高い割合となっている。
○ 不安や悩みごとができたときに相談相手がいるかどうかを尋ねたところ、9割を超える高齢者が「相談相手がいる」と答えている。相談相手(複数回答)としては、「世帯員」が65.0%と高くなっている。ひとりぐらしの高齢者では「世帯員以外の親族」59.7%、「友人・隣人」24.9%が高い割合になっている。
 

H 所得の状況

☆ 平成11年中の総収入については、「200万円以上」の収入のある高齢者は全体の約半数で、『昭和60年度調査』から連続して増加している。また、「500万円以上」の収入のある高齢者は14.0%となっている。特に男性の高齢者の1/4は、「500万円以上」の収入がある。−(報告書 P.122)
☆ 高齢者本人の収入源(複数回答)は、「年金・遺族扶助料」93.2%、「就業収入」28.7%、「家賃・地代・配当金」14.5%となっている。
○ 生計中心者が「本人」である割合は、『昭和60年度調査』から連続して増加しており、『本調査』においては6割を超える高齢者が生計中心者となっている。特に、75歳未満の男性の高齢者においては、生計中心者である割合が9割を超える。