]T ぼけ(痴呆)の理解と対応

社団法人呆け老人をかかえる家族の会 副代表理事
国際アルツハイマー病協会 理事
京都南病院老人保健施設ぬくもりの里 副施設長
三宅貴夫
 

1.ぼけ(痴呆)とは 

@ アルツハイマー型痴呆と血管性痴呆の診断基準(アメリカ精神医学会・DSM−W。1994年)の概要

 (1)アルツハイマー型痴呆の診断基準(aからeまでを満たす)
   a.以下の知的障害がある
        記憶障害
        以下の知的障害がひとつはある
        失行,失認,失語,実行機能(総合的判断などに基づく総合的な行為)の障害 
   b.aのために社会生活に支障をきたす  
   c.ゆっくりした発病と進行性の障害がある 
   d.aが他の中枢性神経疾患によるものではない.
   e.意識障害はない

 (2)血管性痴呆の診断基準(aからeを満たす)
   a.以下の知的障害がある  
    記憶障害  
    以下の知的障害がひとつ以上ある    
       失行,失認,失語,実行機能(総合的判断などに基づく総合的な行為)の障害 
   b.aのために社会生活に支障をきたす 

   c.神経学的局所症状の所見や症状あるいは他の検査から脳血管疾患を認め,それが障害の原因と考えられる
   e.意識障害はない
 

A 「一度獲得した知的機能の著しい低下により自立した生活が困難な状態」(定義)  
 

B ぼけ(痴呆)の補助的な判定方法

  (1)長谷川式簡易知的評価スケール

質 問 内 容 配点
お年はいくつですか?(2年までの差を正解) 0 1
今日は何年の何月何日ですか?何曜日ですか? (年月日、曜日が正解でそれぞれ1点づつ)
       年     月     日     曜日
0 1
0 1
0 1
0 1 
私達が今いるところはどこですか?
(自発的に出れば2点、5秒おいて、家ですか?病院ですか?施設ですか?の中から正しい選択をすれば1点)
012
これから言う3つの言葉を言ってみてください。後でまた聞きますので、よく覚えておいてください。
(以下の系列のいづれか一つで、採用した系列に○印をつけておく)
1:a)桜 b)猫 c)電車 2:a)梅 b)犬 c)自転車
0 1
0 1
0 1
100から7を引いてください。
(100−7は?それから7を引くと?と質問する。最初の答えが不正解の場合は打ちきる)
0 1
0 1
私がこれから言う数字を逆から言ってください。
(6-8-2) (3-5-2-9)
0 1
0 1
先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
(自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合、以下のヒントを与え正解であれば1点
a)植物 b)動物 c)乗り物
012
012
012
これから5つの物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。
(時計、鍵、たばこ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なものを使う)
012
345
知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
(答えた野菜の名前を下に記入する。途中で詰まり、10秒待ってもでない場合にはそこで打ちきる)
5個までは0点、6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4点10個=5点
012
345
*20点以下は痴呆の疑い

(2)三宅式簡易判定法  
ぼけ    なし         あり
年齢 ほぼ正確に言える 正確な年齢が言えない、または言えない
注:年齢が言えてもぼけの場合はあるが、年齢が言えないでぼけでないことは稀れ。

2.ぼけと似た精神障害

1)うつ状態 
2)せん妄
3)妄想症
4)幻覚妄想状態
5)性格障害
6)その他
 

3.ぼけの原因(ぼけの状態は1次要因と2次要因によって決まる)

  1)1次要因 
  (1)アルツハイマー病  
  (2)脳血管障害(脳卒中)  
  (3)その他(レビー小体病.硬膜下血腫.脳腫瘍.低酸素脳症など)

  2)2次要因
  (1)身体状態(脱水.発熱.貧血など)
  (2)精神状態(緊張.不安.焦燥.うつ状態など)
  (3)生活環境状態(介護者の理解.日課.住居環境など)

     表 1次要因と2次要因の関係 
 

4.ぼけの精神状態

 1)記憶障害
 2)判断の障害 
   (1)総合的判断の障害
   (2)抽象的判断の障害
   (3)時系的判断の障害
 3)「昔に生きる」
 4)感情やプライドは残る
 

5.ぼけの重症度と経過

1)重症度
(1)三宅の分類
 

  軽 度 中等度 重 度
知的機能の低下(記憶障害・見当識障害
判断の障害)
 +  +  +
失語・失認・失行などの
脳機能障害
 −  +  +
歩行障害・嚥下障害など
神経症状乏しい感情・無関心
 −  −  +

(2)柄澤の分類
(3)痴呆性老人の日常生活自立度

2)経過(アルツハイマー型痴呆・脳血管性痴呆の場合)
 

注:全てがこのような経過をたどるわけではなく、個人差がある。
 

6.介護の基本

 1)ぼけの状態を知る。相手を知る。
 2)できることに合わせる。できることをしてもらい、残存能力を活かす。 
 3)感情に配慮する。
 4)昔の世界を受け入れる。
 5)身の安全を守る
 6)介護者自身を介護する。
 7)社会資源を利用する。
 

7.ぼけへの対応

 1)ぼけの理解
 2)ぼけの介護工夫
 3)介護者の心身の健康
 4)家族・親族・地域の理解
 5)地域の援助と制度の利用